DK-SIS白書2019_opt
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2業界総粗利の減少傾向に歯止めかからず DK-SISでは業界総粗利こそが業界の規模を表す最も重要な指標であると考えている。DK-SISから推定される2018年の業界総粗利は、3.38兆円(対前年-0.14兆円)とDK-SISで集計を開始した1995年以降での最低値を更新した。さらに2018年の売上規模は20.7兆円(対前年-0.7兆円)で、こちらも下落が続いている(第1章5節参照)。212018年1業界考察14 第1章  DK-SISで見る業界動向場した機種を新規則機としてリメイクしたものであり、ライトミドルタイプ・ライトタイプの機種がほとんどとなった。新規則機の型式試験の適合率が旧規則機と比べてかなり低下しており、ハイミドルタイプのメイン機種の登場にはもう少し時間がかかるものと想定される。結果的には2018年に登場した「設定付きパチンコ」を含む新規則機の業績貢献が伸び悩んだことで、新規則機に対するネガティブな論評も見られた。2019年以降、リメイクではないメイン機種の登場、業績の中心となっているハイミドルタイプの機種の登場で、これらの状況が少しずつ変化していくのではないかと思われる。 パチスロにおいては10月に初の6号機となる「S…HEY!鏡」(大都技研)が登場し、稼動貢献15週とこれまで登場した5.9号機と比べて高い稼動貢献を残した。「高射幸性遊技機」が残る中でも稼動貢献する6号機が登場したことで、6号機に対する期待感も上昇する結果となった。しかしながら2018年末までに登場した6号機は上記を含めて5機種に留まり、「S…HEY!鏡」以外は 2018年の遊技機利益(推定される業界全体の新台購入費用を業界総粗利から差し引いた金額)は2.71兆円(対前年+0.02兆円)で、2017年と比較して横這いとなった。2017年に引き続いて新台の販売台数が大幅減少したことで、遊技機の購入費用が抑えられ、店舗に残る遊技機利益は横這いを維持した。 業界総粗利の下落を食い止めるためには、「ファンを減らさないこと」が必要である。しかしながいずれも稼動貢献・総合貢献ともに苦戦する結果となった。パチスロはパチンコ以上に型式試験の適合率が低くなっており、ファンに支持される遊技機を作る以前に、まだまだ適合に向けたノウハウ作りに苦労している状況が窺える。 2021年2月にはパチンコ・パチスロともにすべての遊技機を新規則機に入れ替える必要がある。特にパチスロは現在メインとなっている機種の検定切れ・認定切れに伴い、2019年末にはかなりの台数の入れ替えを余儀なくされる。また、2019年1月末に予定されていた「高射幸性遊技機」を15%以下にするというスケジュールは延期されたものの、2020年1月に5%以下にするというスケジュールは変わっておらず、代替えとできる6号機の供給が少なくなった場合、業績の急落を招く可能性や、最悪の場合遊技機の設置すら困難になるという可能性も否定できない。パチンコ・パチスロともに適合率を向上させ、安定的に遊技機を供給できる環境が整うことはもちろんであるが、その中から業績貢献できる機種が数多く登場することが望まれる。ら、現状における世間からのイメージを考えると、「ファンを減らさないこと」も非常に困難な状況にある。この状況を打破するためには、「のめり込み問題」・「健全性のアピール」・「喫煙や店内の音量等の環境問題」・「低価格で遊べる環境の実現」等、解決すべき課題が非常に多い。また、それ以外にも「少子高齢化」・「若年層の参加率低下」・「時間消費型レジャーの多様化」等、社会の変化による問題もファン減少に繋がっている。 上記のように様々な課題があり、業界規模を再び上向かせることはそう簡単なことではない。業界を発展させるためには、これらの問題を少しずつでも解決していくことは必要不可欠である。大衆娯楽としての原点に立ち返り、誰もが楽しく健全に「遊技」したくなるような環境の再構築が必要なのではないだろうか。

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